登山、かんたんな山歩きやハイキング、それにキャンプやMTBなんかも含めて、アウトドアに興味を持ってギアをリサーチし出すと、
「どうやら持ち物は軽いに越したことないらしい」ということが雑誌やネットなど色々なところで散見されると思います。
非常にざっくり言って、UL(=ウルトラライト)やファストパッキングとは、
荷物をできる限り軽くして、より長く・より遠くまで楽しんで行けたら素敵だよねという理想に基づき、身軽な方がそれを達成しやすいぞという話です。

で、早速どうにかして情報を集めたいのですが、
案外、完全な初心者向けで小難しい事抜きに参考にできる本がありそうでない!
山岳雑誌は対象にしている読者の知識レベルが広過ぎて、初心者に割かれている部分があっても分量が少なくて十分な情報が得られません。
一方で、初心者をカバーしているという触れ込みの書籍では、
「入門書レベルにも程があるだろ」といった具合か、あるいは反対に、
「"UL"=ウルトラライトは、アメリカで生まれた発想で、欧州のアルピニズムとは一線を画し、自然に回帰することをモットーに創始者はこの人で……」
と始まってしまって、どれも溢れる思いを即座に昇華はしてくれないものです。
そこで、最近手に入れたある雑誌の特集が本当の入門者にとっては一番参考になるんじゃないかと思ったので紹介したいと思います。
もくじ
実はUL初心者が手にすべきはPOPEYE
うっかりオシャレ雑誌の一言で片付けそうになってしまいそうですが、「Magazine for City Boys」がコンセプトということで、ファッションはもちろんですが、カルチャー誌としての側面も色濃い雑誌です。
紹介するのは、POPEYEのバックナンバー、2014年12月号で、
その名も「ポパイの遊歩大全 '14」。

5年も前の雑誌なので、わたしは某BOOK◯FFで110円で購入する事ができました。
遊歩大全と銘打ったULハイキング特集号
そもそも遊歩大全とは、アウトドアのあらゆることが書かれた、ハイカーの間ではバイブル的存在の1970年代刊行の書籍です(詳しい説明は置いといて)。
その名を冠したこの号では、もちろん本家の遊歩大全を踏まえつつも、ムーブメント発祥から現代に到るまでの流れ、そして今まさにアウトドアで楽しむ人たちにどのように精神が受け継がれているかを写真やイラスト付きでサクッと眺めることができるものになっています。

『山と道』主催の夏目彰さんや、この道の有名イラストレーターであるジェリー鵜飼さんなど錚々たるメンツの実際の装備品がまるっとセットで見られるのは、この雑誌くらいしかないのではないでしょうか。

ULの真髄が垣間見える充実の内容
しかも紹介されている方々は、同じハイキングでも皆それぞれスタイルを持っていらっしゃるので、「削る部分と手厚くする部分のバランス」が見えてくるのが非常に実践的。
間違いなくこのPOPEYEは、自分らしいスタイルを探すきっかけになるはずです。
例えば、
- 荷物が重くなっても安眠したいから、寝具には一切妥協しない
- おいしいコーヒーは欠かせないから、他で重量を削ってでも持つ
- 家にある衣類を工夫して、ロングハイキングに対応させる
など。
コレ!というルールがあるわけではないので、自分が心地よい時間のために頭をひねって工夫することが大切なのだと皆さんの装備が教えてくれます。
また自分と似たこだわりを持つ方がいれば、初心者はまずは真似してみるということも可能です。
ほかにも釣り人や写真家、スキーヤーや川下りと、かなりバリエーションにとんだラインナップなので、中級以上になっても違う畑からアイデアを拝借することだってできてしまいます。
初心者に最新ギア情報は必要ない
5年前の雑誌というところで、「え? 今から買い揃えるんだから最新情報じゃなきゃダメでしょ!」とお思いではないでしょうか。
個人的にはその必要はないと思います。
最新ギアは確かに、高性能で軽量、新素材なんかも使われていたりと心踊る要素はたくさんあります。
しかし、いきなり超過酷な環境でも攻めない限りは、最新モデルと5年の型落ちモデルの差を、初心者は実感できません。
5年前に良い評価を受けたギアは今でも素晴らしい実用レベルを誇っているはずですし、さらに型落ちのセール品や中古品を手に入れることができれば初心者の参入ハードルは大きく下がります。
それに経験上、一発で完璧に「間違いない」ギアにたどり着くことはそうありません。
そういう意味で、5年前に発売され、かつ、その誌面の中でベテランたちが何年も愛用する逸品や名品に出会えるPOPEYE2014年12月号は、初心者ならずとも最良の参考文献の一つと言えるのではないでしょうか。
理論派UL初心者も納得の内容
冒頭で「小難しい」としてバッサリ切り捨てた、UL・ファストパッキングの歴史や時代の変遷、さらにはアティチュードなど、いわば教科書的な内容も踏まえてから入門したいと感じている理論派タイプの方ももちろんいらっしゃると思います。
そこもご安心を。

ご覧のように、要約ではあるものの、年代ごとの名著の内容を並べて見られるというレイアウトはどの書籍よりも直感的な理解につながりそうです。
もちろん本家、遊歩大全の早わかりページも収録されています。

この充実の内容を月刊誌で刊行するマガジンハウスをまじで尊敬します。
5年前の雑誌をどうやって手に入れるのか
わたしの場合、中古店で発見することができました。
が、検索したところ、なんのことはない。
オフィシャルでバックナンバーが購入可能でした。
新品で欲しい方はこちらで。
中古でも構わないって方は、フリマアプリやなんかで「遊歩大全」と検索すれば、本家に紛れてヒットしますよ。
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こんな良書がこんなにリーズナブルに買えてしまっていいのでしょうか。。
ULファストパッキング、その道は長い
初心者にとって優しい入門書であり、さらなるレベルアップを目指す中級者にとってもアイデアの宝庫と言えるこの雑誌ですが、
皮肉なことに、その充実した内容・先駆者たちの工夫が溢れている事は、その道を究めるには果てしなく長い道のりが存在することを示唆します。
ま、端的に言って「奥が深い」ので、時間をかけて付き合っていくには最高の趣味であると言えるでしょう。
この雑誌をきっかけにウルトラライト沼、ファストパッキング沼に是非はまってみてください!
ULナメたらアカン……
最後に念のため。
荷物を減らして最低限の装備で自然に入ることは、身軽さと引き換えに危険を近づける行為でもあります。
あまりニュースになっていないかも知れませんが、安易に軽装で山に入り命を落とすケースは毎年必ず発生していることも事実です。
先人たちの装備を見ながら、決して甘く見ることなく、最初から攻めすぎないようにご注意を!