以前に「アスレジャー」というスタイルが、特に30代・40代を迎えた男性にとって、機能性とコストパフォーマンスの面で非常に合理的で、ファッションへの情熱を失ってしまった方にも、楽をしながらも納得の服選びができるのではないか、という提案をしました。
↑この記事では、馴染みの薄い「アスレジャー」という呼び方を使うのを控えて、わかりやすく「アウトドアファッション」と少々強引に言い換えて、その有用性について説明しています。
今回はもう少し詳しく「アスレジャー」とは何かについて説明してみたいと思います。
前回記事と合わせて読むことで、アスレジャーを実践する動機付けになったり、さらにファッションの幅を拡げることができるかも知れません。是非合わせてご覧になってください。
もくじ
身近なアイテムに見るアスレジャー

まずは改めて、アスレジャーがどんなスタイルか思い浮かべやすいように、日本でヒットした代表的なアイテムを挙げてみると、
- ユニクロのジョガーパンツ
- パタゴニアのレトロXフリース
- ナイキのテックフリースシリーズ
などはCMや雑誌などで見かけることが多かったのではないでしょうか。
スポーティーでありながらスタイリッシュ、そして男女問わず選べるスタイルとも言えますね。スポーツキャップをかぶった女性も多く見かけました。
アスレジャーへ至る流れ

では、想像ができたところで簡単な解説です。
アスレジャーとは、運動競技を表す「アスレチック」と、余暇の意味の「レジャー」を組み合わせた言葉ということは以前にも解説した通りです。
2000年代後半からもてはやされ始めたアスレジャーですが、ではアスレジャーに至るトレンドのルーツは何だったのかと言えば、それは「ノームコア」というものでした(少々強引な運びではありますが)。
Appleのスティーブ・ジョブズには、自分にベストな洋服を大量にストックし、毎日同じ服装しかしなかったという有名なエピソードがあります(ジョブズのスタイルは、イッセイミヤケの特注ニット+リーバイス501+New BalanceのM992)。

あのスタイルこそ「突き詰めたノーマル(=Normal+Hardcore)」=ノームコア(=Norm-Core)の代名詞です。
ノームコアには、シンプルな定番アイテムを自分にとって最善のクオリティで選ぶという「没個性のようでいて実は個性が滲み出る」ことにも特徴があります。
アスレジャーは時系列的にはノームコアに続く形で(トレンドにも様々な文脈・支流があるので一概には言えませんが…)、「ノームコアのシンプルさ」を引き継ぎながらも、日常の様々のモード(通勤、仕事、アフター5)をよりシームレスにしたファッションと言えるでしょうか。
そしてどちらのスタイルも、大量消費社会へのカウンターとしての側面を持っており、エコロジカルもしくはミニマルといったスタンスも反映されています。
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なぜアスレジャーが支持されるのか
日本も含め、世界中で多くの人がアスレジャー志向になっていった具体的な要因ですが、個人的には以下の二つが大きいように感じています。
- ヨガ・マインドフルネスの流行
- ヒップホップミュージックの世界的ヒット
もっと沢山のキッカケが考えられますが、裏付けが取れる影響の大きい要因としてピックアップしています。
通勤は自転車、会社帰りにヨガ教室

こんなライフスタイルを日本でもチラホラ耳にするようになりました。
また、ヨガやマインドフルネスはビジネスシーンでもその効能が語られることが多くなり、近年それらに取り組む人口は倍増していると言われます。
米国でヨガや瞑想の人気が拡大:ヨガをした人2240万人、瞑想した人は5年で3倍(出典元:ニューズウィーク日本版)
ここでは効果について言及しませんが、どちらも仕事帰りに気軽に通えるフィットネスであったことが普及した原因の一つだと思われます。
また、社内教育や生産性アップのためにマインドフルネスを取り入れる企業もあったため、この流れを借りてアスレジャーはどんどん世間に浸透していったのではないでしょうか。
現代のファッションリーダーは誰だ
もう一つの要因は音楽のトレンド。いつの時代も音楽シーンの動向はファッションに大きな影響を与えます。
昨今の音楽シーンの新たな局面として、2015年に「世界で最も聴かれている音楽ジャンルの座」をヒップホップミュージックが奪いました。
ヒップホップが最も世界で聴かれている音楽ジャンルであることが明らかに(出典元:NMEジャパン)
もちろん2015年以降もヒップホップは売れ続けており、近年のグラミー受賞者などを見渡しても、その市場規模の大きさが伺えます。
またミュージシャンの中でも、ファレル・ウィリアムス、カニエ・ウエストの影響力は別格で、ファッション関連の話題も数え切れません。
二人を現代のファッションリーダーと言っても大げさではないでしょう。

そして、ステレオタイプのヒップホップファッションのアイコンと言えば、もっぱらセットアップのジャージ。そしてベースボールキャップ。
現代ではもっとスタイリッシュになった部分もありますが、元々スポーツブランドとの相性が良いことは説明するまでもありません。
こうした背景を持ちながら、アスレジャーは既に世界的なスタンダードファッションになりつつあります。
ライフスタイルこそファッション
すべてのライフスタイル、生活に取り入れるフィットネス、イヤホンから聴く音楽、これらがわたしたちのファッションを変えていきます。
これは逆に言えば、ファッションを変えることでライフスタイルや習慣を変化させられると言ってもいいかも知れません。自分にとって楽で、合理的な格好を突き詰めることは、最適なライフスタイルを探し当てることにも繋がります。
また、QOL(=クオリティ・オブ・ライフ)という言葉もよく耳にするようになりました。
自分の身の回りに置くファッションや音楽、取り組むアクティビティや学習、さらには仕事や家庭も含めすべてを繋ぐようにライフスタイルを構築できたら最高ですよね。

いまファッションにあまり興味が持てない状態だったとしても、試しに新しいテイストを取り入れてみたら人生が変わるかもと考えたら、ファッションに時間を割くことは決して無駄ではなく、それどころかむしろ有意義とさえ言えるでしょう。
そうした意味で30代、40代の男性にこそ、最適な選択肢の一つとしてアスレジャーをオススメします。